このブログを始めてからというもの、基本的に文字いじりはやめていたんですが、今日はその感動をよりダイレクトに綴る為解禁いたします。
実は、一番高いチケットを買った。
理由は、前の記事にも書いているけどあの狭くしかしサッカー専用スタジアムである三ツ沢にJ1の強豪が来るなんて、そうそうめったにないから。もう前日からワクワクして・・・。
一番高いチケットとはつまりメインスタンド中央。
ついて、まずびびったこと。
一番前が空いている・・・・・・・。
というのも、かの熱くて有名な仙台ファンでもさすがに天皇杯四回戦でわざわざ仙台から出てくるわけがない。横浜にいる仙台ファン+仙台の仙台ファンでは充分にゴール裏からバックスタンド側コーナーまで続いている最安値自由席チケットのゾーンだけで足りてしまい、高い金を払ってメインスタンドまで手を出さなきゃいけないほどの人数はいないのですね。
一方、横浜は完全なホーム。地元。メインスタンド中央は仕切りがあるわけでもないのに、綺麗に真ん中で割れて、横浜側だけ席が埋まっている状態。横浜の応援をしたいし、けれどメインスタンドの仙台ファンが0というわけでは無い以上「半分からあっちはベガルタさんの席」という意識があったみたいですね。
というわけで、楽しいサッカーが見られればそれでOKな僕は遠慮なく真ん中若干ベガルタ寄りのメインスタンド最前列で生観戦。発狂しました。
そして、スタメン発表。
前日のニュース記事通り、岡田監督はバリっとベストメンバー組んできました。
そう、出てきたのですよ奴が。怪物:久保がね。
試合前からわかってたとは言え、びっくりしたねホント。

久保近っ!!(汗)
試合は、序盤はベガルタペース。
はっきり言って完全に二軍を出してきたベガルタだったので、序盤からFマリノスがイケイケなのかと思ったら、そうはならないのがサッカー。自分の目当てとしてはFマリノスだけじゃなくてベガルタのバロン、財前、シルビーニョ、最近好調の村上、大柴なども見たかったので残念だったのだが、もう優勝も降格もないFマリノスに対しベガルタは今現在入れ替え戦出場権の得られる3位に勝ち点差1で4位につけてるうえ、次節はみちのくダービーとどう考えてもレギュラーメンバーは出せない状況。けれど、関口やそして何よりベガルタ期待の星萬代が見れたので、これはこれで良かった。まあ、ベガルタの詳しいことは僕よりよっぽど詳しい武藤様に任せておきましょう。
序盤は関口のスピードや突破力を武器に、何度か決定的な場面をベガルタがつくる。関口は素晴らしい活躍。後半は消えていたけども。そして、萬代。いったいどの程度できるのかなと思っていたら、結構やるやる。でかいくせに、なんと結構スピードもある。技術も申し分なく、これは確かに逸材だ。なかなかコンスタントには良い動きをさせてもらえず、ボールを失うこともしばしばだったが、中盤が完全に競り負けていて、尚且つ松田と中澤に着かれたわけだから、同情すらしたくなってくるってもんだ。
ベガルタペースで進むなか、目の前に一人の男が姿を現す。

あ、都並だ!( ゚Д゚)
完全に忘れていた(笑)
そう、僕はベガルタ側のメインスタンド最前席に座っているのだから、その真下にあるテントのしたには当たり前に監督がいるのである。現役時代からも見ていたしスポーツうるぐすでもおなじみ。こんな近くで見たの初めて・・・。声すんごい聞こえるし・・・。
さて、試合に戻る。
先制点はドラゴン久保。
右サイド奥のFKから、久保の頭へ。敢えて常套句である"ピンポイント"は使わない。久保の跳躍力と決定力が凄すぎるから。
久保の得点後からは、もうずーっと横浜ペース。
はっきり言って手がつけられない。ベガルタも、二軍を出してきた割には選手のクオリティも低くないし、チームとしてのまとまりもあった。時折、鋭いカウンターを見せていた。都並は実は中々良い監督なのだろうか。けれど、それも失点前ほどの得点チャンスは無かった。この辺、中西、中澤、松田の個人能力にも組織守備にも脱帽。カウンターでピンチになっても、最後の最後、一番大事な局面には必ず顔を出しキッチリと守る。これではベガルタも成すすべが無い。
加えて、中盤の圧倒的な強さ。
奥、マグロン、上野のセンターの3人は技術水準が高く、そう簡単にパスワークを崩せない。奥のテクニックを活かしたドリブルキープも素晴らしいし、そしてマグロン。本当に良いMFだ。FWにしたほうが良いんじゃないかというあの長身に、足元の技術も正確で、パスも的確だ。戦術なのか、この試合ではトップ下の位置にいることが多かった。狭い三ツ沢で激しいプレス合戦になったとき、球際の競り合いや、プレスの厳しい攻撃的MFの位置に敢えて彼をおいて制圧し、その周りを衛星のように走らせ奥にゲームをつくらせる作戦だったのだろうか。
そして、鉄人ドゥトラと技術と速度を兼ね備えたサイドアタッカの田中隼磨。さすがにJ2の常時スタメンでもない選手に1対1で止められる選手ではない。
この中盤の選手たちが、技術に慢心せず走り、守備においては一気に取り囲む。ベガルタはこれでは突破口が見出せない。良くて引き分けでしょう。
前半を1失点で凌いだけれども、現実問題としてこれはまだまだ横浜の得点が増えそうだという予感。というわけで、別にどちらのファンでもない僕は、一人観戦なのを良いことにハーフタイム中にFマリノス側へ移動。
つまり
常に横浜の攻撃側で観戦(笑)
後半開始して早々、久保の得点。
http://www.sanspo.com/soccer/top/st200511/st2005110401.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051104-00000026-nks-spo
はっきり言います。
スポーツ各紙よ。
お前ら本当にサッカーを見る目がないんだな。
サンスポより
"後半開始早々には2点目。相手のクリアがポスト左に当たるとボールが目の前に。これを右足で決め「待ってただけ」の“ごっつあんゴール”も生まれた。"
日刊スポーツより
後半開始直後。相手DFのクリアがポストに当たってはね返り、吸い込まれるように久保の足元に。「待ってたら来た感じ。いてよかった」と謙遜(けんそん)するが、ストライカーらしい位置取りで得点機を逃さなかった。
あほか!
久保を取り上げ、褒めちぎりたいならなんで大事なところをスルーするのだ。
クリアがポストにあたったのは、キーパーの頭を飛び越したグラウのループシュートをなんとか掻き出した結果だ。グラウは落ち着いてループシュートを打った。もう少し急速が早ければゴールしていただろう。そのループをアシストしたのは誰だ。
久保でしょうが
本当に久保は怪物だ。
なんでもない後方からのロングボールを、ベガルタDFを背後に背負いながら完全に頭一つどころか二つぐらい抜け出して、完璧にグラウへ落として見せた。なんちゅう跳躍力と背筋力。久保の凄さを語るなら、グラウの決め切れなかったボールが足元へ来たことより、この呆れるぐらい高い身体能力で"ただの"ロングボールをあわやWアシストにしてしまうかもしれなかったことだろう。
3点目を奥が奪い、その後久保はお役御免で退いた。
そして、グラウのPKで四点。
横浜の圧勝。
間違いなく、久保だ。
彼をここまで近くで見たのは初めてだが(審判に謝罪する声まで聞こえた)、より一層彼の凄さの秘訣に迫ることが出来た気がする。
ピッチを退く際に、横浜ベンチの前を通っていったのだが、そこでなお彼の肉体について考えさせられるものがあった。彼は、体格という意味では大きいが、実は線が太い選手ではない。かなり細いのだ。鈴木や巻、西沢の方が太いと思う。なぜ、久保はあそこまで1対1に勝てるのか。筋肉の質が並みの高身長ポストプレイヤとは違う。細いが、無駄が無く、そしてなによりしなやかだ。天性の足腰の強さもあると思う。一度ドカっとその位置にポジショニングされたら、びくともしない。太い幹のように。けれど、動きはまったく硬くない。
想像するに、彼の筋肉は猫科、というよりダイレクトにヒョウに近いのだと思う。伸縮に長け、無駄な筋肉が無いためコストパフォーマンスも良いし、反応も良い。アフリカ系の筋肉だ。きっと、彼があれ以上に筋肉をつけたら体が重くなり、硬い筋肉がついてあの瞬発力は発揮されないと思う。また、しなやかな筋肉だからこそ、ボディバランスも格段に良くなり、高いテクニックも維持できる。
そうだ。やっぱりそうだ。
久保は日本人らしくないのだ。
恵まれた体躯に、天性の足腰の強さ、そして伸縮自在のしなやかな筋肉。
その"ボディ"にポストプレイやPA内でのポジショニング、シュートを打つためのトラップに、スペースへの動きの質という、FWとしての戦術。
一つ一つの個々の能力だけで見れば日本にももっと優れたFWはいるだろう。
けれど、これだけの能力を全て奇跡ともいえる高次元で兼ね備えたFWは久保以外には見当たらない。
久保は化け物だ。
最後に、久保の凄さを垣間見たようなワンシーンを。
前半序盤。右サイドPA外側で後方から浮き球を受けた彼は、悠然とそのパスをトラップし足元に。僕は、じっと見つめていた。あの位置から久保がボールを持っても、あまり意味はないし、恐怖もないからだ。さっさと味方に預けて中へ入ったほうが、敵にとっては怖い存在となりうる。
「どうするのだろう」
僕は見つめていた。
彼は、僕の予想を裏切るプレーに出る。
なんと、ベガルタDFラインに一気に突っかかったのだ。
久保のドリブルによって蹴られたボールは中方向へ進む。
しかし、ベガルタDFもバカではない。一人が身を投げ出してチャレンジ守備をしたかと思えば、中盤からもう一人下がって、プレッシングへと行く、完全に道をふさがれた久保。かと思いきや、守備をしているはずのベガルタDFをまるで"引きずられたまま、まとわりついている"ようにしか見えないような突進を見せ、中盤から下がったもう一人のベガルタ選手のアタックにも、まとわりつかれたDFをそのままに、大きなストライドで一歩を踏み出し、結局ベガルタは二人とも猛獣を押さえ込むことが出来なかった飼育員のようにバランスを崩してしまった。そのこぼれ球を、3人目のベガルタDFが処理することで、なんとか久保は止まる。
プロが3人がかりでやっと止められるとは。
この化け物に餌を与えるスコットランドにいる魔法使いとオランダとイングランドにいる猛獣使いを見たくなった。