えらいマニアックな嗜好ですね(笑)
去年度、高校選手権の地元神奈川代表を応援に行ったのです。コレとかコレ
で、「サッカーのコンテンツ以上に面白いなぁ」と思ったので「コレは、感情移入をするために予選から観に行かねば」と思って、今回に至ります。で、準決勝から見てきました。計三試合のべ6チーム。
準決勝第一試合
秦野 vs 武相
結果 0-0
P.K 7-6
後半から見たのですが、この試合はほんっとに面白かった!
何が面白かったって、武相のサッカー。
武相の選手は皆虚弱体質なんじゃないかと思うぐらいw、小さくて細い子ばかりだったんですが、全員足元の技術やスピードに優れよく動いていた。プレーもブラジル的というか、ジェフ的というか。玉際を持ち前の技術で制し、小刻みにパスを繋ぎ、局面で自慢の突破力を披露する。特に10番の武藤君?が素晴らしく、持ってよし繋いでよし、走ってよし。面白いのが、武相の選手はその技術に溺れることなく皆が良くは知る。サッカーのスペクタクルの基本である「ボールホルダーを追い越せ」を頻発。素晴らしい。昨年度の野洲のミニチュア版を見ているようでした。
ただ、高校サッカーの難しいところはトーナメントであり、まだ80分を走りきる体力が備わっていないこと。序盤から走り続けた(らしい)武相は、徐々に体力の低下、特につなぎからフィニッシュ、セットプレイ全てに絡み左腕に腕章を巻く文字通りチームの大黒柱10番武藤の運動量の低下は、そっくりそのまま武相サッカーの減退を意味する。
ここから、力を発揮しだしたのが秦野。
これは県立高校故のメンタルなのか、秦野は後の決勝においても後半に強い。この準決勝でも後半に盛り返し、そして延長戦においても攻勢にまわったのは後半から。技術や体格が有名私立に多少見劣りするということもあるが、秦野の時間になればそれも影を潜める。つまり、スロースターターというよりは後半のメンタル減退が少ないということなのだと思う。ともかく、最後まであきらめず走りぬき、ボールを追いくらいつく。その気迫が秦野の方が勝っていたと思います。
結果は、PK戦で秦野。
正直、武相はかなり良いサッカーをしていたので凄く残念だった。
また、ここがとても高校サッカーの楽しいところなのだけれども、PK戦の際、武相のGKは自分の守りが終わるたびに、儚くもゴールに吸い込まれてしまったボールをしっかりつかみ、武相の次キッカーが来るまでそれを大事そうに抱え、肩を叩きながらキッカーにそのボールを渡す。目を凝らしてみていると、どうやらその際に一言二言言葉をかけているようだった。見ているだけで目頭が熱くなる。
また、サドンデスに入り結局武相のキッカーがセーブされてしまい敗北を喫することになるのだが、失敗してうなだれるキッカーに真っ先に歩み寄ったのは10番主将の武藤だった。そして、敗北が決定した瞬間、武相GKのところへ一番に歩み寄ったのも、同じく武藤だった。素晴らしいプレーを披露し、充分に勝機もあった。本人も辛いだろうにこれぞキャプテン、これぞチームのエースという器にアッパレ。
桐光学園 vs 日大藤沢
結果 2-0
打って変わって正直、こちらはつまらない試合だった。
というのも、お互い全く勝負をしない。無難なパスに雑なロングボールだけ。DFラインとボランチで、右へ左へ繋ぐだけ。その先がない。サイドバックから、同サイドのもう一列前に当てたところで敵が即座に詰めてきて、結局バックパスをするだけ。これが、鏡で映したかのように同校とも全く同じノーリスクサッカーをする。
原因ははっきりしている。
両チームのボランチ、サイドバックが中から縦へのグラウンダーのパスを一切出そうとしない。多少のリスクを買ってでも、あそこはビシっと前のFWの足元に通るようなパスを出さないと次の展開が生まれない。こういうパスは小野や名波大先生、長谷部や遠藤が上手いですね。
低いラインでサイドにふっていれば危険は無い。大きなミスさえしなければほぼ完璧にリスクを抑えられる。けれど、それでは、相手が無理に詰め掛けてこない限り攻撃は出来ない。そらそうだ、敵は中にボールが来ないのだから両サイドに散って守備をすればいい。FWにバシっと当てて、狭いところを一本ないし二本通す。すると、自ずとサイドが空いてくる。それから、サイドにふらないと全くもってサイドへ振る意味が無い。
両校ともに神奈川県内では強豪に部類される高校だけに、どうしても慎重になってしまうのかもしれない。これはこの国のユースサッカーにおいて、トーナメント方式を採用していることによる弊害でしょう。
しかし後半、日大藤沢がその禁を破り動き出す。前掛かりになり、積極的にリスキーなパスを通し、運動量も格段に増える。桐光は待ってましたかといわんばかりの対応でその裏をついて攻めるが、急にはエンジンがかからないのかロングパスの精度があがらない。自ずと若干日大藤沢ペースとなり、決定機を迎えるのだがあと一歩で入らない。
皮肉にも、先制したのは先に前向きなアクションを起こした日大藤沢ではなく桐光だった。左サイドからのクロスの崩れを、PA後方で受けた桐光10番は浮き球を胸トラップした後、浮いたそのボールをダイレクトボレーで返す。なんと、一直線に日大藤沢ゴールに向かいゴール左隅バーに直撃、バーの下部分を叩いたボールは、垂直に落下して地面についた頃にはラインの向こう側だった。これは目の覚める、いやワールドクラスと言っても過言ではないシュート。さすが10番。会場からもどよめきが起きていた。いや、本当にすごいシュートだった。
日大藤沢は決して諦めずその後も好機を作ったのだが、皮肉にも桐光が追加点を取る。しかし、この追加点は後味の悪いものだった。終了間際に日大藤沢のCK。日大藤沢は長身のDFもあげ総力体勢の中、ボールがあがる。揉みくちゃに競った後、PAに残ったのは日大藤沢のFWとDFの倒れている姿だった。ボールは、こぼれ球を拾った桐光が前線まで運ぶ。
日大藤沢の選手は二人とも桐光PA内で倒れもがいたまま起き上がらない。相当な怪我のようだ。どうやら流血している。しかし、それでも桐光イレブンは薄くなった日大藤沢陣内に容赦なく攻め込み、そして何より審判が試合を切ろうとしない。主力DFを含む二人も捥がれた日大藤沢DF陣は、その混乱が上乗せされた桐光のカウンターの対応に苦しみ、力尽き結局ゴールを割られることとなる。
僕は甘いのかもしれないが、これは納得がいかない。高校生とて色々なものを背負い込んで一発死のトーナメントに参加しているわけで、必死にカウンターを発動した桐光イレブンは責められない。しかし、審判は一度試合をとめるべきだったのではないのか。CKからの競り合いで日大藤沢の選手がピッチに倒れたのは一目でわかった。しかも、見ていればどうやら尋常ではない。桐光のGKですら心配そうに声をかけていた。結局、頭部から流血していたこの選手は交代することとなるが、最終的に試合後に救急車で運ばれたようだ。
プロならいざ知らず、このままサッカーを続けないで別の道に進む選手だっている。もし、あのまま彼ら二人の選手生命が絶たれていたらどうするのだろう。「サッカーではまれにあること」として片付けるのだろうか。日本サッカーの将来を担う選手達が集い行うこの大会において、それはあまり健全とはいえないのではないか。あれでは、つまるところ苦しくなったら競り合いで相手を吹っ飛ばしてゴールポストにでもぶつければよいということにだってなりかねない。
高校サッカーに大事なのは、少なくともサッカー界にとってはその後の日本サッカー強化に繋がる有望な選手をプロに送り込むことだろう。であれば、選手を日本サッカーのあるべき姿に導くよう、選手の意識を統一することは大変大きな任務であり、その内容が「相手に怪我をさせてもいい」「大怪我で倒れている選手への配慮などいらない」というような、危険なものではないはず。そのような、ある種のフィジカル全盛への方向性を審判が示すというのは、いかがなものか。少なくとも僕は大反対であるし、ピッチに倒れている選手が二人もいる(しかもかなりの重症と見受ける)状態であれば、一度試合を止めるべきであると思う。
う〜ん、僕は甘いのだろうか。