始めは、マークのつき方も知らない、オフサイドに対するDFライン設定の仕方もわからない、連携力なんて本当の意味で0。そりゃあもう勝てないし、ズタボロにやられるし。でも、試合を重ね練習を重ねるごとに声を出し、組織力を高め、ポジショニングを考え出す。すると、なんとか勝てるようになってくる。ボロボロに負けた逗子のチームには、若手にもシニアにも勝利を収め「男子三日会わざれば刮目して見よ」という言葉を貰った。
迎えた市のトーナメント初戦。
僕の役目はチームに声を出し、スペースを埋め、ボールを追いかけ、中盤でパスを繋ぐ。
そして何より、県選抜クラスにもひけを取らない、チーム自慢の司令塔の守備の負担を出来る限り減らし、ともかく彼からの有効な展開を促すこと。
FWをやりたがり、よくも悪くもエゴイストのチビ助はその運動量とスピードで右サイドを切り裂き何度もチャンスメークに貢献した。小太りで走らない、けれどポストプレーとシュートだけは天下一品のFWは落ち着いてゴールを決めた。そのほかの仲間も、素人も経験者も関係なく走りぬき、動きの堅かった序盤もエースの一発で救われた。
結果は3−0。
初の公式戦。皆の動きが堅く、初心者も多くいるとなれば、この初戦は大事な意味を持つ。公式戦の勝敗に慣れていない仲間もいるのだから、結果いかんではその後のモチベーションに大きく関わってくる。だから、代表としては、自分が集めた仲間と一緒に初戦を飾れたことは涙が出るほど嬉しかった。
学生仲間で集めたチームは、人間関係を心配することは無かった。その点で組織を作り上げるのは容易かった。しかし、学生ゆえに歳を重ねるにつれ環境が大きく変わり、今チームは事実上存在しない。まだサッカーを続けている者もいれば、フットサルに流れた者、球蹴りに興ずることはなくなってしまった者、その後はさまざま。
けれど公式戦初戦。チームの最前列で僕らが繋げたボールをゴールに叩き込んだエースストライカが、今までのどんなFWよりもカッコよく見えたことを僕は一生忘れないと思います。
このチームの記憶とともに。